自然大学15期　芦生実習 　2009/10/24-25
　５月の春日山（暖帯林）、６月の金剛山（太平洋側の温帯林）に続いて、秋の芦生へやってきました。
芦生の植生は、研究林事務所付近は暖帯林から温帯林への移行帯、上部は温帯林となっています。
森林と動物の関係や、ここ芦生でも大変心配されているニホンジカによる下層植生消滅、カシノナガキクイムシによるナラ枯れ被害などについて学習しました。
　今回も、渡辺教授と只木学長にご同行いただきました。

　京都大学芦生研究林の構内を抜けてトロッコ道へ。
大きく聳え立つ木は、コウヨウザン（広葉杉）。中国原産

　途中で井栗さんと出会い、話を聞く。

　灰野の集落跡にて、渡辺先生から芦生の歴史などについて講義。

　

　 熱心にルーペで観察する受講生。
見ているのは、ロクショウグサレキン。
　山の神さまが祀られているところのトチの大木の前で。
今年は、トチの実が豊作だったらしい。
 　夕方には、芦生山の家で、渡辺先生からツキノワグマについて説明を受ける。
　２日目はバスで林内へ。

 　下谷のトチノキにて。
　渓畔林の観察をしながら移動。下層植生の消失によって、泥が堆積し、川が浅くなり魚もめっきり少なくなったとのことです。
 　大カツラ。新しい樹幹を外側に立ち上げるのは、不安定な渓流沿いに育つために適したしくみとなっている。
　長治谷小屋があったところで。
渡辺先生が住み込んでいたという小屋は大雪で倒壊してしまった。（風呂焚きなど、当時のお話も伺いました）

 　背後の林分は、広葉樹を巻枯らしして、スギを残した箇所。
周囲に比べて、スギが多い。
　野田畑湿原にて。シカ防護柵の内側と外側の植生の違いを観察しているところ。柵の内側にはミゾソバがあるが、外には全く見られない。イ（イグサ）の群落に変わっている。
 　手前が、イ（イグサ）、中央の緑の濃いところはイヌワラビ。いずれもシカの不嗜好植物だけが生えている。
　ガイドの方からアシウスギの説明を受ける。アシウスギは生長が遅いので、材もヒノキより強度があるということです。 　アシウスギは「伏状更新」といって、雪に押さえつけられた枝が地面についたところから発根して、別の個体に生長するという性質を持っている。
　カシノナガキクイムシにより枯れたミズナラの根元付近のフラス（木くずと糞が混ざったもの）。

 　この木（ミズキ）には、昔（昭和３０年代）に、ツキノワグマが登って実を食べていたといいます。
オニグルミの実は、みんなきれいに二つに割られていました。どんな動物がいるのか、想像がつきますね？

 虫こぶ部分にだけ葉緑素が残ったブナの落ち葉。
クマシデの果穂

 一際目立つ、コウライテンナンショウ。これも有毒植物です。
　１０年ほど前には密生していたササ（ネマガリタケ）が全く見られない。
 　ハイイヌガヤなども消滅してしまった。
下層植生が消滅し、ミズナラなどの上層木が枯れてしまえば、この先芦生の森は大きく変わってしまうかもしれない。
杉尾峠
 林道へ向けて歩道をおりる。なんと見通しのよくなったこと。
ハクウンボク ケケンポナシ
ヒイロハリタケ。
　これは、シイタケのホダ木に発生していたもの。
 スギヒラタケ。
　以前は食用とされていたが、数年前から死亡例が報告されるようになった。
ロクショウグサレキン。
 シイタケ。
　大きなコナラの枯れ木に発生していた。
キララタケ。広葉樹の倒木などに生える。
 同左。
ツリガネタケ。白色腐朽菌。

 コフキサルノコシカケ。白色腐朽菌。
ウスキブナノミタケ。ブナの堅果に発生する。

 ミズナラの倒木に発生していた、ナメコの幼菌。
　この他にもいろいろなキノコはありましたが、みんな腐朽菌（分解菌）の仲間で、菌根菌は見つけられなかったのは気のせいでしょうか？？　　
　ミズナラなどブナ科の植物が枯れる→ブナ科と共生する菌根菌が消えるのか、菌根菌が消えるから樹木が弱って枯れやすくなるのか？
生態系は複雑に絡み合っていますから、見えない土の中で大きな変化が起きているのかも知れませんね。